まるで映画の中から飛び出してきたような風貌で、バーテンダーの理想を体現する五十嵐さん。スーツはこれまで第二の皮膚と呼べるほど着込んできたそうです。
「 今の『BAR TRENCH』ではホワイトのジャケットを全員共通のユニフォームにしているのですが、その前はいつもスーツでカウンターに立っていました。ちなみに今でも、外で行うイベントや、ほかのバーにゲストバーテンダーとして招かれたときはスーツで出かけています。細かいところが気になるたちなので、オーダーメードのものが多いですね」
そんな話しぶりからは、かなりのスーツ上級者であることが伝わってきます。麻布テーラーでのオーダーは今回が初めてだという五十嵐さん。ショップを訪れてまず伝えたイメージは、映画『フェラーリ』でした。

「BAR TRENCH」で提供される数々のオリジナルカクテル。そのなかでも人気なのが「トレンチ75」と名づけられた一杯です。シャンパンとジンで作る「フレンチ75」をアレンジしたもので、ジン・レモン・はちみつをベースとしつつ、シャンパンの代わりにスパークリング日本酒を用いているのが特徴。優しい発泡感がポイントです。
「アダム・ドライバーが演じるエンツォ・フェラーリのスーツ姿がとても格好よくて、大きなインスピレーションを与えてくれました。実は私、これまでグレーのスーツを一度も着たことがなかったのです。ほかに好きな色があるからという理由に加え、グレースーツは少々、落ち着いて見えすぎかなという懸念がありまして…。しかしフェラーリの映画をきっかけに、私もそろそろグレースーツが似合う大人になってきたかなと考えを改めました。シルエットも映画にならい、たっぷりとゆとりをとってクラシックに。パンツも股上深め・裾幅広めのワイドレッグにしたんですね。それから、いつもベストを着ていることもあってVゾーンは狭めが好みなので、段返りではなく3ボタン上2つがけにしました」
そのツウなオーダーに、接客を担当したスタッフからも思わず感嘆の声が漏れていました。そして完成したスーツに袖を通した五十嵐さんの顔には、静かな笑みが。

シャツはタブカラーがお気に入りで、こちらもオーダー品。よく見ると襟に「Trench」の刺しゅうが。
「うん、イメージどおりですね。非常にベーシックなグレー無地ですが、少し光沢のある生地をすすめていただいたのが大正解でした。これなら照明の下でも映えますし、地味に見えることもないでしょう。シルエットもちょうどいい。しっかりとゆとりがありつつ、それでいてダボっと見えないバランスですね。映画『フェラーリ』のアダム・ドライバーを見て引かれたのは、止まっているところだけでなく歩いている姿まで美しいところ。それは適度なゆとり感がもたらしてくれるものだと思うのですが、このスーツならまさに、動いても絵になりそうです」
カウンターの中へ入ると、スーツを着たままシェーカーを振り始めた五十嵐さん。
「うんうん、いい感じ。実はオーダーのとき、スタッフの方が“シェーカーを振ったときにも窮屈にならないよう、胸周りにスペースをとってはどうか”と提案してくれたのです」
シェーカーを振る動作は全身を使うかなりハードなもの。窮屈なスーツを着ていると、さらにその負担は増してしまいます。そんな五十嵐さんならではの課題を会話の中でスタッフが見出し、その解決策をご提案。これぞパーソナルテーラーの強みです。
「動いても快適なゆとりがあるのに、見た目にダボっとした感じはありません。オーダーならではの魅力だなと感心しましたね…さぁ、当店オリジナルのカクテル『トレンチ75』ができましたよ。どうぞご賞味あれ」

黄金色に輝くジガーカップは特注品。スムーズに材料を注げるよう、カップの角度をカスタマイズしているそう。
カウンターの中へ入ると、スーツを着たままシェーカーを振り始めた五十嵐さん。
「うんうん、いい感じ。実はオーダーのとき、スタッフの方が“シェーカーを振ったときにも窮屈にならないよう、胸周りにスペースをとってはどうか”と提案してくれたのです」
シェーカーを振る動作は全身を使うかなりハードなもの。窮屈なスーツを着ていると、さらにその負担は増してしまいます。そんな五十嵐さんならではの課題を会話の中でスタッフが見出し、その解決策をご提案。これぞパーソナルテーラーの強みです。
「動いても快適なゆとりがあるのに、見た目にダボっとした感じはありません。オーダーならではの魅力だなと感心しましたね…さぁ、当店オリジナルのカクテル『トレンチ75』ができましたよ。どうぞご賞味あれ」