
情熱
4CHAPTER 情熱 麻布テーラー最大の強み、それは「人間力」にほかなりません。日本のみならず、欧州を回りスタイルや生地の動向を常に研究するクリエイティブ部隊。手間暇を惜しまず、一着一着に魂を込めるファクトリーの職人。そんな“チーム麻布テーラー”の最前線に立つのが、店頭でじかにお客さまと対話するスタッフたちです。彼らにしか聞けない、お客さま一人ひとりの声。その重みを知っているからこそ、彼らは誰よりも熱い思いを胸に秘めています。ここから紹介するスタッフたちの姿を通して、その情熱に触れてください
情熱接客
オーダーのひとときを感動体験に変えたい。そんな情熱を燃やすスタッフたちは日々何を考え、実践しているのか。じっくりと語ってもらいました。
楠本大仁

英国と銀座で学んだ
おもてなしの神髄
麻布テーラーのトップライン〝クレスト〟のマネージャーを務める楠本は、麻布テーラーのなかでも異色の経歴をもっています。14歳から英国に渡り、ファッションの超名門、セントラル・セント・マーチンズ美術大学に進学。在学中からロンドンのテーラーに入門し、その後もしばらくそこで働きました。帰国後は銀座のビスポークテーラーに在籍し、そして麻布テーラーへ。フルオーダーではないにもかかわらず、ここまで精度と自由度の高い服ができるのか!と感銘を受けたことが理由だったそうです。
スーツの聖地ロンドン、そして日本の最高峰が集う銀座で研鑽を積んだ日々。そのなかで彼が学んだのは、〝一流のテーラーは一流の美意識をもつべし〟というモットーでした。
「私が学んだ人たちはみな、所作がとても美しかったんです。自らの美意識を高くもつことで、お客さまへの礼儀を表現しているのだと気づかされました。採寸などの技術や知識は当然重要ですが、それだけではお客さまに上質な体験価値を提供できない。ですから私は、サインをいただくペン1本まで美意識を込めて選ぶようにしています。〝わざわざ来てよかったな〟という、上質な記憶。それを私は、スーツと共に提供したいのです」
内山信人

人とのつながりを大切に
磨き続ける “傾聴力”
店長を務める内山は、ある特技をもっています。それは、記憶力。「お客さまと交わした会話の内容は、ほとんど覚えていますね。ちなみにお顔も一度お会いすれば忘れることはほぼありません」と、涼しい顔で話します。その秘訣を尋ねると、「相手のことをよく見て、その声を真摯に聞くことでしょうか」との答え。それは彼の仕事すべてに通じるモットーでもありました。
内山が麻布テーラーに入社したのは2016年。スーツはかねてから好きだったものの、プロとして通用するほどの知識はありませんでした。しかし、持ち前の〝傾聴力〟を発揮して、先輩たちからの指導を猛烈な勢いで吸収。気づけば、内山目当てで訪れるお客さまが集まるようになっていました。「言葉遣いや姿勢など一挙一動まで、先輩たちからの助言を聞き逃さないように努めました。そしていつしか、接客においても〝聞く〟ことの大切さを実感するようになったんです。初回のお客さまの場合、何をお求めかをできるだけ丁寧に聞く。2回目のお客さまなら、〝正直、前回の仕上がりはいかがでしたか?〟と忌憚なきご意見を聞く。それは服の完成度だけでなく、お客さまの精神的満足度にもつながると思います。結局オーダーって、人と人とのやりとりなんですよね」