ビジネスウェアの多様化は混沌か?それとも好機か?
コロナ禍の影響によって我々の生活様式は大きく変化した。テレワークが普及したことで、働き方だけでなく、ビジネスウェアも多様化が進んでいる。たしかに自宅で仕事をすることが多いなら、スーツを着る必要もないし、着心地もケアも楽な方がいい。働き方に応じて服装が変わるのは当然だ。
ただ、ひとつだけ忘れてはいけないことは、服装が変わっても、ビジネスの本質は変わっていない、ということ。仕事で初対面の人に会ったとき、相手に印象づける要素はやはり容姿と服装が判断基準の中心となる。服装よりも能力が優先されることは言うまでもないが、実際のところ、「仕事さえできれば、どんな服を着ても構わない」という職場で働いている人はまだ少数派だろう。
では、「スーツさえ着ていればいい」という従来の基準が失われつつある今、どんな服装が正解なのか?
昨年、日本が誇るAI技術研究の第一人者である松尾 豊教授を取材する機会に恵まれた。その際、松尾さんが放った言葉は現代のビジネスウェアを考えるうえで、大きなヒントとなる。
「実際のところ、シリコンバレーやシンガポールでも、ほとんどの研究者がカジュアルな服装をしています。それはビジネスマンとは違うというカウンター・カルチャー(対抗文化)の意識の表れだと思いますが、私はさらにそれに対抗して、カウンター・カウンター・カルチャーとして、ほとんどの時間をスーツで過ごしているんです。何より質の高い研究を続けていくためには、多くの人々に自分の人間性を理解してもらい、共感してもらう必要があります。そのためにも『自分がどう見えるかを意識すること』は大切なこと。礼儀や品のよさ、体形をきれいに見せる効果を兼ね備えたスーツは私にとってベストなビジネスウェアなんです」
松尾さんの見解は麻布テーラーの信念にも通じる。ビジネスウェアとは、シーンや自分の立場にふさわしいものであり、かつ自分の個性や自信、人間的魅力を高めてくれる服装であること。そのうえで、現代の生活にフィットする快適さや機能性を兼備した服装こそが新しいビジネスウェアの姿なのだ。
志のあるビジネスマンにとって、服装の多様化は、混沌ではなく、自分の価値をプレゼンテーションする絶好の好機となる。スーツ、セットアップ、ジャケパン、シャツスタイルなど、さまざまな服装が存在するが、麻布テーラーが目指すのはひとつ。顧客のひとりひとりがビジネスウェアの新しい秩序を確立することなのだ。