麻布テーラーの人々 橋本大輝 選手 (体操競技 )

「麻布テーラーの人々」と題し、麻布テーラーと深く関係のある一線で活躍をされている方々にお話をうかがう本連載。今回は、東京2020オリンピックで、個人総合と種目別鉄棒の両方で金メダルを獲得し、日本中を歓喜に沸かせた橋本大輝選手の登場です。当時19歳だった橋本選手は、市立船橋高校から順天堂大学に進学。今年の春には、晴れてスーツの似合う社会人として、その歩みを進めることになりました。

尊敬できる監督やコーチからの指導を受けながら、体操仲間たちと切磋琢磨する素晴らしい環境の中で競技生活を送ってきた輝かしい学生時代を経て、この4月から新たな環境のもとで競技生活をスタートさせました。生活スタイルも一変されたのではないでしょうか?

橋本さん:そうですね。競技面でいうと、今は学生時代よりもむしろ体操に純粋に打ち込めているように思います。個人ではとてもまかないきれないような、それこそ、トレーナーによる身体的なサポートはもちろん、練習以外でも、食事面での栄養サポートなども受けながら、アスリートとして成長できる環境を整えてもらっているおかげで、これまで以上に、のびのびと体操に専念できています。

なるほど。これまで以上に、精神面・体力面において最良の状態を維持できる環境のなかで、選手として更なる成長を続けていらっしゃるわけですね。

橋本さん:練習や試合への取り組み方はもちろんですが、日常生活を送る上で、人としての魅力を高めることもより意識するようになりました。特に、身だしなみについては、これまで以上に気を遣うようになったと思っています。

やはり、一流のアスリートとしてはもちろん、社会の一員としての立場も忘れてはいけないということですね。特に周囲から何かと注目される立場ですから、余計に気をつけないといけません。プロ意識の高い人ほど、品格を備えていて、服装や話し方、立ち振る舞いに違いがはっきりと現れるものです。

橋本さん:そうですね。これから社会人として、きっちりとした装いを求められるシーンも増えてくると思っていましたので、やはり、しっかりとしたスーツやジャケットを揃えておきたいとは思っていました。学生時代は、少しゆったりとリラックスした服装をすることもありましたが、どちらかというと、きっちりとした装いをすることが多かったかもしれません。

なるほど。公式の場における社会人としての品格、そして、リラックスした場においても相応の上品さを演出できるようにということで、今回はスーツとジャケット、それぞれをオーダーされたわけですね。

橋本さん:はい。実は今回、スーツをオーダーするにあたっては、スーツスタイルそのものの成り立ちや意味などについても下調べをしてから臨みました(笑)。

本来、スーツとはスリーピースで構成される服であり、長い伝統をもつイギリス発祥の服であった、ということを知ったこともあって、一着はチャコールグレーのスリーピーススーツに。そして、リラックスしたシーンでの食事会やこれから年末年始に掛けて増えるであろうパーティなどにも備えて、華やかなシーンにもぴったりのジャケット&パンツのセットアップスタイルに挑戦しました。

それは素晴らしい! 何事に対しても、自分をより良くしよう、もっと成長したいという強い向上心をお持ちなるとは、さすが一流のアスリートです。プロスポーツ選手にとって、向上心は不可欠な要素。装いについても、徹底的に磨き上げようというわけですね。

橋本さん:これまで、大学の入学式、成人式、そして卒業式、いずれもスーツはオーダーしたモノで出席してきました。既成のスーツですと、どうしても、サイズが身体にフィットしにくい部分が多く、納得のいくスタイルを叶えることができませんでしたから。

特に、肩幅と二の腕周りが窮屈に感じることが多くて、シルエットもそうですが、既製品ですと着心地もイマイチなこともあって、特にジャケットに関してはオーダーメイドでないと納得できませんでした。

明るいベージュのジャケットが上品さやしなやかさを演出してくれていますし、顔馴染みもとてもよく、フレッシュな印象もあって、とてもお似合いです。

橋本さん:ありがとうございます。“美しい立ち姿”を求める意味では、スーツスタイルも体操競技に通じる部分があるように思います。私の体操も“姿勢や基本動作の美しさ”を重視している部分がありますので。

リラックスしつつも、身体のラインに沿った美しいシルエットを描くジャケットが欲しいって、矛盾したリクエストをしてしまいました(笑)

そんな時こそ、ジャージー素材はうってつけ。身体に程よくフィットしながらも窮屈さを感じることなく上品なシルエットを描く、といったように相反する二つの要素を同時に叶えることができますからね。

橋本さん:なるほど。確かに、いつも背中を丸めると、両肩を引っ張られるような違和感を感じていましたが、このジャケットは可動域が思っていた以上に広がっていて、一切のストレスを感じさせない快適さだったことにはとても驚きました。

しかも、オーダーなので生地をあれこれ選べたところも愉しめましたし、ネイビーやグレー系は既に持っていたこともありましたから、今回は新鮮さがほしいと思いこの色に決めました。「こんなジャケットにしたい」という漠然としたワガママを、高いレベルで実現してくれて、非常に満足しています。これなら、練習着としても使えてしまうのではないか、と思えるくらいの快適さ(笑)

色々な場面でコーディネートを愉しんでほしいと思います。

橋本さん:それこそ、トークショーなどのイベントや今日のような取材対応といったオフィシャルなシーンではもちろん、パーティや食事会など、プライベートなシーンでも大いに活躍してくれそうです!

ありがとうございます! 是非、長く愛用してください。

橋本さん:実は、冬場って体操選手にとっては、しっかりトレーニングをして次のシーズンに備えるための大切な準備期間でもあります。タンパク質など、適切な栄養補給を行い、筋トレなどを行うことで、筋肉量が大幅にアップする、なんてことがあるのです。

なるほど。ということは、ひと冬超えると、身体がひと回り大きくなっていることもあるわけですね。

橋本さん:はい。春に作ったスーツが、ひと冬超すとサイズアウトしてしまい、翌春にはもう着られなくなってしまった、なんてことが実は、過去にもありましたが、その心配はなさそう(笑)。その点もジャージー素材の良いところかもしれませんね(笑)

快適でシワにもなりにくこともあって、ビジネスマンでも出張や移動の多い方にとっては非常に人気の素材でしたが、実は、アスリートの方にとっても、最適な素材なのかもしれませんね。最後に、選手としての今後の目標をお聞かせください。

橋本さん:まずは、2028年に開催予定のロス五輪出場に向けて、日々の練習にしっかり取り組でいくことだと思っています。やはり、五輪メダリストの素晴らしさを知っていますから、あの景色を再び見たいという気持ちは強く持っています。

一方で、オフの日には、イベントや取材をお引き受けしながら、体操や自分をもっとたくさんの方々に知ってもらうきっかけを作っていきながら、ファッションも愉しんでいきたいと思っています。


橋本 大輝 さん
2001年8月7日生まれ、千葉県出身。体操に取り組んでいた2人の兄の影響で同じく体操競技を始め、2019年には日本代表に選出された。世界大会で多くの金メダルを獲得し注目される日本が世界に誇る体操界のエース。得意種目は、「あん馬」と「跳馬」そして「鉄棒」。