基本のネイビーだからこそ生地の上質さにこだわりたい
端正かつ清潔感あるスタイルを築け、誠実で信頼できる人柄まで表現できるネイビースーツは、ビジネスパーソンにとって必須のアイテム。ストラディヴァリウスをはじめ、数十億円の価値がある名作楽器を日常的に扱う中澤創太さんは日々その恩恵を感じているようで、クローゼットにはネイビースーツが最も多く並んでいると言う。
「職業柄、海外の方を含めていろんな立場の方とお会いしますから、仕事で着るスーツは基本的にネイビーと決めています。実際ネイビースーツを着ていれば、急に重要な商談やミーティングがあった場合でも安心ですからね」
今回、仕立てたネイビースーツは、生地にロロ・ピアーナの「オーストラリス」を使用する。こちらは同社が用いるオーストラリア産原毛のうち、とびきり高品質なスーパー150’S原毛のみを厳選したコレクション。豊かな光沢やしなやかなタッチを特徴とし、真夏を除いて年間着用できるのも魅力だ。
「光沢感がとても素晴らしいです。テカテカしたスーツは嫌ですけれど、これは光り方が落ち着いている。ドレープの出方も非常に綺麗ですね」中澤さんが選んだオーストラリスは、麻布テーラーの別注仕様。スーパー150’S原毛をあえて太めの60番手双糸に撚りあげた糸を用いたことで、エレガントな風合いそのまま、程よくハリコシをたたえた生地となり、耐久性もぐっと高まっている。ここもこの生地を選んだ理由の1つだと言う。
中澤さんはネイビースーツに、白か薄青のシャツを合わせ、ネイビー無地のネクタイを締めることが多い。そういうアンダーステイトメントなスタイルを好む分、最近は生地選びにとてもこだわっているそうだ。「色や柄で派手さを出したくない性格なので、個性を主張するのは生地の上質さしかないなと(笑)。そういう意味でもこのロロ・ピアーナは最高です。オーダー時に、シンプルなネイビー無地でありながら、少し光沢感があり、仕立て映えするような生地を…とぼんやり好みを伝えたところ、紹介していただいたのがこの生地でした。もはや普通のネイビーでは満足しなくなっているボクですが、これは明らかに別格のラグジュアリーさをたたえており、とても気に入りました」
最高の生地を最高の着心地に仕立てたフィッティング
スーツのデザインや仕立て、そして何より麻布テーラーによるフィッティングにも感動したと語る。「ジャストフィットで驚くほど軽いですね。ボクは朝から晩までスーツを着ることが多いので、この軽さは本当にありがたい。まるでカーディガンを羽織っているような感じです。イタリアのサルトで仕立てたこともありますが、一発でこんなに自分にフィットするスーツが仕上がるなんてことはそうそうなかったと思います。確かな採寸に加え、日本人体型を熟知した経験値があるからこそだと感服しました。またディテールの選択肢も豊富で、自分好みの仕様をとことん追求できたのも楽しかった。とくに気に入っているのがマニカカミーチャ仕様の肩周り。手縫い感がすごく出ていて、柔らかな仕立てとあいまって、これならナポリのサルトで仕立てたスーツと言っても通用するんじゃないでしょうか。じつは近々ナポリに出張予定があり、現地でスーツを仕立てようかなと考えていたんですが、その必要性を感じなくなりました(笑)。イタリアンラグジュアリーを体現したロロ・ピアーナの特別なネイビー生地といい、麻布テーラーだからこその、ここ一番で頼りになる上等な一着ができたと実感しています」
- 中澤創太 さん
- 日本ヴァイオリン 代表取締役社長
- 東京都生まれ。日本を代表する弦楽器商にしてヴァイオリン鑑定家。2018年に21挺のストラディヴァリウスが集結するアジア初のイベントを開催し、話題に。著書に『TOKYOストラディヴァリウス 1800日戦記』(日経BP 出版)あり。