ドーメルジャポン インタビュー | オーダースーツ・オーダーシャツの麻布テーラー | azabu tailor
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鈴木貴博さん(「ドーメル・ジャポン」 取締役社長)25th INTERVIEW No.3

麻布テーラーと深く関係のある方々にお話をうかがう本連載、今回お話を伺うのは「ドーメル・ジャポン」 取締役社長の鈴木貴博さんです。英国の伝統に、フレンチのエレガンスを絶妙に加味したようなドーメルの高級服地は、麻布テーラーの設立以来、常に高い人気を誇っています。なぜここは、そうした独特 のムードある生地を作ることができるのか? 新たに登場した麻布テーラー渾身の別注生地の開発背景 なども交えながら、鈴木社長自らにその理由を語っていただきました。

  • Photo :Taro Yamada
25th interview vol.3

ドーメルといえば世界最古のマーチャント(生地商社)として高名です。歴史を改めて簡単に紹介していただけますか。

ーメルの創業は 1842 年。フランス人であるジュールズ・ドーメルは若干 22 歳で英国の ハダースフィールド州ヨークシャーを訪れ、そこで作られる毛織物の素晴らしさに大変感動したそうです。 そしてこれを世界に広めたいと考え、フランスに生地商社を設立したのが出発点です。以来、182 年にわたっ て家族経営を続け、現在は5代目のドミニク・ドーメルが生産の総指揮をとっています。ちなみに日本に 一番早く入ってきた高級舶来服地はドーメルだと言われています。

近年はマーチャントの枠組みを超え、自社のミル(工場)も複数所有していますよね。

はい。ハダースフィールドに傘下のミルを持ち、さらに昔から長く使っている複数の工場 と専属契約を結び、オリジナルの生地を生産しています。そういう意味では、我々は “ミル・マーチャント” という存在なのかなと。最近はイタリアの提携工場で生地を作ってもらうこともあります。綿や麻の染め技術に関しては、イタリアのほうが上手なので。老舗でありながら、こういう時代に合わせた柔軟性を持ち合わせているところもドーメルの強さだと思います。とはいえ、もちろんメインで生産としているのは、今もハダースフィールドです。

ドーメルの生地が独特の雰囲気をたたえているのは、やはりフランスの企業というところが大きいと思います。イギリスで生地を作らせていても、色柄などにどこかフレンチらしいエレガンスが漂う......。

私どもでは “フレンチエレガント & ブリティッシュタッチ” と呼んでいるのですが、フランスのエッセンスが入っている英国生地は、たしかにドーメルしかないと自負しています。

私たちはブランド創業時から欠かさずドーメルの生地を扱ってきましたが、ドーメルさんとしては麻布テーラーに対してどのようなイメージをお持ちでしょうか。

店構えにしろ、オーダーシステムにしろ、常に新しいことにチャレンジし、メイド・トウ・メジャーという素晴らしい文化を改めて日本に広めてくれた功労者。もともとドーメルは百貨店や老舗のテーラーなどでスーツを仕立てられる服好きの方の間では認知度が高かったのですが、オーダースーツ初心者や若い層にまで名前を知らしめてくれたのは、麻布テーラーのおかげでしょう。オーダー生地をメインとしているサブライヤーにとって、一番大切なのはお店の現場です。手を替え品を替えオーダーの魅力を発信し続けている麻布テーラーは、欠かせないパートナーだと考えております。

ありがとうございます。今までの両者の取り組みの中でとくに印象に残っていることがありましたらお聞かせください。

やはり「メヌエット」でしょうか。もともとは麻布テーラーの希望する目付け、色柄、タッチでドーメルが特別に作成した別注生地でしたが、リピートを繰り返していただくほど好評を博したことで、2017年に、正式に日本マーケット向けの限定コレクションとなりました。強く撚った糸を使うためにハリコシに富むところ、またシワになりづらいところや、高温多湿な日本に適した通気性の高さなども好まれ、毎シーズンとても高い人気です。

24年秋冬には、またまたスペシャルな麻布テーラー別注生地が登場しました。 ドーメルの定番である「ロイヤル 12」を、世界で14台しか現存しない希少なドブクロス織機で織り上げるというもの。「これぞ究極のヴィンテージ服地!」と、スタッフの間でも早くも評判です。

ロイヤル12は、タテヨコに太めの52番双糸を使っています。もともとこの番手は “サヴィルロウ番手” と呼ばれ、昔からサヴィルロウのビスポークテイラーが一番好んできたもの。しっかりした生地に仕上がるため、自分の思い描くラインで裁断でき、理想のシルエットのスーツが仕立てられるからです。一方ドブクロス織機は、エアジェット式織機の6分の1のスピードでゆっくり織り上げるため、ウール本来の柔らかさや膨らみ感、弾力性などを保った生地を織ることができます。今回の別注生地は、ロイヤル12の味わいを極限まで引き出すのに最高のチョイスであり、よりリアルで上質なヴィンテージ服地が出来上がったんじゃないか なと実感しています。もちろん、ドブクロス織 機でロイヤル12をー織り上げるのは今回が初の試みです。

糸も製法も、ノスタルジーにあふれた生地ですね。こういう昔ながらの製法で作られた生地の魅力は、最初は若干カチッと感じても、着ているうちにどんどん身体に馴染んでいくところだと思います。そういう過程をうちのお客様に楽しんでいただけたらと嬉しいなと考えています。

かなりマニアックな生地ではありますが(笑)、麻布テーラーであれば、この生地の素晴らしさをお客様を上手に伝えていただけるんじゃないかなと期待しています。古き良き本物の英国服地、いやドーメルが日本に初めて入ってきたころのような感動を味わってみたい方々に、ぜひ紹介していただたらと思います。

かなりマニアックな生地ではありますが(笑)、麻布テーラーであれば、この生地の素晴らしさをお客様を上手に伝えていただけるんじゃないかなと期待しています。古き良き本物の英国服地、いやドーメルが日本に初めて入ってきたころのような感動を味わってみたい方々に、ぜひ紹介していただたらと思います。

ドーメルは進化し続けている老舗。
麻布テーラーも、クラシックを大切にし続けながら常に新しいことにチャレンジしているという点では共通するものを感じています。
今後も一緒に新しいことに挑戦していければと願っています。どん身体に馴染んでいくところだと思います。そういう過程をうちのお客様に楽しんでいただけたらと嬉しいなと考えています。

こちらこそよろしくお願いいたします。私は常々、麻布テーラーは単なるオーダースーツ販売店を超え、ファッションという文化そのものを提供しているお店だなと感じ、そこにシンパシーを感じていました。ともに切磋琢磨しながらこの業界を盛り上げていきましょう。